さらば、東京よ。
政治経済の東京一極集中で、中央発信の効率化を求める関西系大企業は軒並み東京へ移転していった。バブル景気の余勢をかって、そしてバブル崩壊のリストラをかねて。企業名でいえば○○ハウス、○○コーヒー、○○電器産業…とそうそうたる企業群が、中枢機能の東京遷都をはたした。
大手代理店電博もそれに合わせCR(クリエーティブ局)を東京にシフトし、関西系スタッフを配置転換させた。
ぼくは、ほぼ個人企業なので、東京と大阪をマタにかけて事業展開するのは、負担が大きすぎるため、しばらく大阪機軸のまま、仕事を続けることにした。
ただ、そうはいっても、主要クライアントの戦略次第では、東京へ移転しなければならないだろう。弊社は、企業城下町の店子のひとつである。お城が移れば、ついていかざるをえない。「こんにちは、東京」。そうなる可能性は高い。
その、東京は。
ぼくにとっては、「こんにちは、東京」ではなく、「おかえりなさい、東京」である。ぼくは、東京の大学に通っていたため、記憶の原風景は東京にもある。故郷とともに、東京は第二のふるさとなのだ。知己も東京に多い。
青春を過ごした街は、人を人ともみない大都会というイメージとは異なり、ほろ苦く切ない。
その、東京が。
いま、いちばんデリケート・ゾーンになっている。
CMでやっている、かゆみの元となる“デリケート・ゾーン”ではない。
リスクのデリケート・ゾーンである。
世界最大の再保険会社・ミュンヘン再保険
といっても、日本人のほとんどは聞いたこともない社名だろう。ミュンヘン再保はスイス再保と並び、世界の再保険会社の二大再保として広く認知されている。
再保険会社の仕事は、保険会社(損保・生保)が入る保険会社のことだ。
たとえば損害保険・生命保険の支払いが、なんらかの理由で急増すると、保険会社にとって保険契約者への多額の保険金支払いが必要になる。最悪の場合、支払いがかさんで倒産してしまう恐れがある。ゆえに、保険会社は、支払いの負担を軽減するためにリスクヘッジとして、再保険会社に加入している。
その、ミュンヘン再保険会社が、自然災害リスク指数(Natural Hazard Risk:以降「NHR」と称す)を設定し、公表している。(図はクリックで拡大。ミュンヘン再保険会社資料より。)
なぜかというと、再保険会社の再々保険会社、というものは存在しない。
ゆえに、保険金支払いがかさんで倒産してしまうことは絶対に避けなければならない。そこで彼らは将来におけるリスクの形成過程を予測し、原因を特定し、理解することが必要になる。
したがって、NHRは、無責任な地球物理学研究室の教授の論文や、地震博士の学会発表などにくらべ、はるかに精度が高いと思われる。もしかして、政府や国家当局者なんかより、もっと精度が高いかもしれない。
さて、将来、リスクになりうるものはなにか?
大規模災害…、台風や洪水、そして大規模地震である。
今回公表されたNHRは、大規模地震の確率を高精度で予測していると考えてさしつかえない。
報告書は語る。東京はリスク7倍。
ミュンヘン再保険会社が発表した報告書「大都市・大リスク」によると、津波や地震などが起きた場合の被害が世界で最も大きい大都市は、東京・横浜圏だと警告している。
東京・横浜圏の「リスク指数」は710。
2位のサンフランシスコの167を圧倒的に引き離している。
ロサンゼルスが100。
大阪・神戸・京都圏が92と続いている。
大阪・神戸・京都圏の92という指数は、エリザベス女王や国際金融資本家の巣窟・ロンドンよりちょっと大きいくらい。まぁ、基準としてロスの100をベースにすると、東京の710というのは、なんと7倍のリスクがあるということだ。
政府は、中央防災会議や各種専門機関にて、南関東直下型地震の確率を30年以内にマグニチュ−ド7前後が70%起きるという、大きな幅をもたせた予測を出している。
日本の当局者による、この「幅」の広さは、ミュンヘン再保険会社のいう、ロスの7倍の危険性、という切迫度とくらべて、いかにも呑気である。
こうした、呑気な政府当局者のおっとり刀の陰で、しかし、政府当局者はやるべきことはやっている。
たとえば、首都壊滅のときの権力機構の分散である。
まず、天皇ご一家の避難先として(?)、京都迎賓館が4月17日に開館した。もちろん、ここは公式発表によれば、外国の大統領や首相などの賓客に対して、宿泊その他の接遇を行うために建設されたものらしい。入り母屋造りの和風建築で、京都御所に隣接する約2万平方メートルの敷地に日本庭園と池を囲むように建てている。まぁ、天皇ご一家の避難先というのは冗談だが、避難もできる(リスク分散)皇居ポートフォリオのひとつとして想定することもできる、というわけである。
なお、先頃東京に完成した新首相公邸は地上4階建てで、延べ床面積は約7000平方メートル。それよりははるかに大規模である。
なお、優秀な官僚のみなさんは、おそらく有事の首都機能移転(分散)ということも念頭に置いたプロジェクトをはじめているだろうとおもいます。
民間企業では、日本の雄・トヨタ自動車(株)が、愛知県豊田市トヨタ 町1に回帰した。俗に中部国際空港からの国際便がいちばん経済効率がいいから豊田市に帰った、という説があるが…。各企業が経済効率を求めて東京に集中するのに対して、トヨタ自動車の判断は異彩を放っている。
情報インフラに関しては、大手情報会社の大規模データセンターは、当然各地に分散して設置されている。情報産業にとって、東京集中というのは、すでに前時代的な発想なのかもしれない。
「1週間以内に、M6級の大地震が関東地方を襲う」――こう言い切ったのは日本地震予知協会代表の佐々木洋治氏だ。【2005年3月31日掲載記事】
その情報は各ブログを駆けめぐったが、真贋を論ずる冷めた見方が支配的な中で11日午前7時22分ごろ、千葉県北東部と茨城県南部で震度5強の地震がおきた。
だから、東京よ。
地方の親戚を大事にしよう。いつでも、疎開できるように。
地方の友達、同級生とも連絡をとってみよう。もしものとき、なにかのコネクションになるはずだ。
お金をもっているひとは、首都壊滅で連鎖反応的にクラッシュする市場経済をあてにしないで、過疎地に農地を確保しよう。西武コクドがリゾート法、リゾートブームにのって開拓していったリゾートではなく。純然たる農地だ。そこで、土と触れよう。休日農業をしよう。自然の感触を確かめておこう。種を買っておこう。種苗会社で、野菜類、穀物、いろんな種を買っておこう。いつでも植えられるように。自活できるように。
防災グッズ、緊急食糧、日常消耗品、医薬品そんなものをストックしておこう。
そして、なにより、自然の声を素直に聞いてみよう。
風の音、雨の温度、温泉の心地よさ、草の息吹、そういったものを意識して感じてみよう。
花粉症でもかまわない、マスクを外して、外に出よう。散る桜の、花のあわれとともに、青い葉の伸びゆく息吹をしっかりと感じてみよう。自然に生かされているんだという素直な直感を取り戻すために。
生命と経験と絆と財産と、なにがいったい優先度が高いのか、ちょっとは考えておこう。
絆は、いまのうちから、世間話なんかをしてたしかめておこう。マネーは、地盤崩壊のときどう役に立つだろうか。宝飾・ブランド品の数々や、クローゼットにあふれ返る着替えの数々は、いったいなんのためにあるのか、ちょっと考えておこう。
財産の崩壊。そして、かけがえのない生命が、あっけなく召しあげられるときに、どんなふうに心を持っていたらいいのか、ちょっと考えておこう。
外側にあるものに頼っていた人生そして、社会。そういったものが、あっけないものだとわかったとき、なにを頼りにしていったらいいのか、それも考えておこう。
いい学校。いい会社。いいポスト。いい仕事。いい伴侶。いい家。いいクルマ。いい時計。いいお酒…。それらっていつまでも磐石のものだろうか。
いいといわれていた価値観が崩壊したとき、崩壊から自分を救ってくれるのは、なんだろう。宗教だろうか。ちょっと考えておこう。教義に帰依させたり、教祖に帰依させたりするあらゆる既存宗教に、あなたは、ぼくは、救われるだろうか。考えておこう。
自分のなかに、ありとあらゆる可能性と、完全なる調和があると。その完全なるものを宿しているのが、自分が気づかなかった魂の本質だとして、本質である魂は永劫に生き続けるとしたら、ぼくらはサバイバルのために汲々とするのではなく、にんげんの本質への気づきや理解を深めるために、いろいろなできごとが起きうるのだと。
そのように、とらえ直すこともできると、ちょっとは考えておこう。
さらば、古い価値概念よ。
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